【インタビュー】千の顔を夢みる「バレエドル」イ・スンヒョン
ユニバーサル・バレエ プリンシパル イ・スンヒョン(28)はクラシック韓流を導く「バレエドル」としてここ何年も注目されている人物だ。 バレリーノに要求されるきれいなターンと高い跳躍など基本技がしっかりとしているうえに柔軟性、繊細な表現能力が強みとして選ばれる。 国内外で多くのファンたちを惹き付けるほどの整った容貌と身体条件の良さは二言する必要がない。
◆ロマンチック・バレエ「ジゼル」貴族青年アルブレヒトを任されドラマチックな感情表現
今年1月日本で開かれたUniversal Ballet Special Galaで「海賊」を演技し、5月モダンバレエ「ナチョ・ドゥアトのマルティプリシティ」に出演する等、休む間もなく無大行進を成して来た彼が今回はロマンチック・バレエの代名詞「ジゼル」(13~17日芸術の殿堂オペラ劇場)で貴族青年アルブレヒトを演技する。
身分を隠したまま外出をした田舎の村で素朴な娘ジゼルに会って恋に落ちるがすでに婚約者がいる自身のせいでジゼルが心臓病発作を起こして死ぬことになるなど悲劇に立ち向かわなければならない人物だ。 この作品はUBCが6年ぶりに定期公演で国内舞台に上げる野心作だ。
▲ 「ジゼル」のアルブレヒト[写真=ユニバーサル・バレエ]
「3年前UBC日本公演でアルブレヒトを初めて演技しました。 バレエを始めて一番好きな作品で心臓が震えるほどでした。当時は幼かったですし経験がなくてどたばたしましたね。 初めての全幕バレエでした。 今は余裕もできたので劇的な要素を追加して観客に近付く計画です。」
イ・スンヒョンが初めて接したバレエ映像がロシア キーロフバレエの看板スター イーゴリ・ゼレンスキーの「ジゼル」だった。空中に停止しているような驚くべきジャンプ技量と表現力に圧倒された瞬間だった。 以後、師匠に集中的に師事を受けたプログラム、舞踊コンクールに出場する時準備したプログラムも「ジゼル」のアルブレヒトであった。 悲しくて沢山の感銘を受けた作品であり、キャラクターとしてしっかりと消化してみたかったところに機会がきた。
◆ 「逸脱と浮気性、罪悪感、後悔など複雑な感情線を上手く描き出したい」
「逸脱と浮気性のような男の原初的指向をよく表現しなければならないと思います。 婚約者がいるのに平民階級が住む所にエンジョイをするために訪問してジゼルに会って一目惚れして、嘘を繰り返して取り返しがつかない状況に置かれて罪悪感と後悔に苦痛を味わうドラマチックな感情線を上手く描き出したいです。」
イ・スンヒョンによればジゼルが純粋で優しいイメージならばアルブレヒトは複合的な心理が目立つ。 3年前このような感情よりも足の動作などの踊りに忙しかった物足りなさを必ず洗練させるという覚悟がある。そんな彼を支えるジゼルは明るいながらもしっかりしているバレリーナ イ・ヨンジョン(26)だ。
「ヨンジョンはパートナーシップがうまくいくように身体が作られている後輩です。 事前にたくさん合わせてみなくてもスムーズに演技できます。 私たち二人とも国内での「ジゼル」は初めてなので1幕と2幕の、互いに違う雰囲気を明確に表わしたいです。 2幕最後の部分でウィリー(精霊)になったジゼルが永遠に離れてさっともりあがる音楽が出てくる時、私も気づかないうちに涙があふれてきます。 情操的に大変ですが最も好きな場面なので今から期待しています。」
◆クラシック韓流の先頭だが整った容貌のせいで配役の限界に悩む
必須コースとして通過すべき群舞陣(コールドバレエ)を経ないまま正団員として入団し、王子や貴族青年をずっと演じてきたため不足な点があると感じたそうだ。 さらに国内だけでなく日本など海外ですら人気の「バレエドル」ではないのか。だが苦しさがにじみ出る話を始めた。
「私は自分がかっこいいとは思いません。整っていて可愛いイメージではない、将軍のようなイメージが希望です。容姿のせいで任せてもらえなかった、例えば躍動的であったり、カリスマあふれるキャラクターのキャスティングから除外されたりすると惜しいですよ。 王子や貴族に限定されるのがとても苦しくて一時期は整形手術をしてみようかとか、メイクをさらに濃くしてみようかとたくさん悩みもしました。」
配役の限界というアキレス腱を治療したのがまさにモダンバレエである。ハンス・ファン・マネンの「ブラック ケーキ」、ナチョ・ドゥアトの「Duende」「マルティプリシティ」、イリ・キリアンの「PETITE MORT」などに着実に出演しながら自由な踊りの魅力にハマった。
◆モダンバレエの自由さにどっぷり浸かって…起伏激しい短所克服が課題
「クラシックバレエは固定された枠組みとポジションがあるじゃないですか。ドラマの展開を演技で表現しなければならないストレスも激しいですね。ですから、モダンバレエを踊ると表現の自由と音楽にもっと同化されるのを感じます。解放感を感じるんです。踊りだけですべての事を表現するのは気持ちが楽で新鮮ですね。」
先月、作品の振りつけのため来韓した世界的な振付家ナチョ・ドゥアトをそばで見守った印象は強烈だった。 彼は室内でも、路上でも、酒に酔った瞬間にさえ音楽が聞こえるたびに体で表現したりした。 人生を表現するために生きる人という考えに深い感動を得た。ドゥアトが自身に「もう少し体を手入れしろ」というアドバイスを金科玉条で胸に刻んだ。
[写真=ユニバーサル・バレエ]
「起伏が激しいのが私の短所です。 からだの状態やメンタルがいつも同じだといいんですが。 これを機に早く成長したいです。 私の分野に対して欲が深い方です。これからはバレエの他にいろんなことを習ってみたいです。 それと共に現役ダンサーの更に先の進路を定めることになると思います。」
[取材後記]二重の目で相手を静かに凝視する彼に尊敬するダンサーを挙げてくれと質問をするやいなや突然目が輝いた。 映画「白夜」でも有名なミハイル・バリシニコフを上げた。 オーラ、テクニック、キャラクター解釈力においてあまりにもものすごいダンサーなのでマネしてみようとかなり試してみたがダメだったと言う。 すべてのことが触れることはできない域に至ったバレリーノだが、努力してみたらつま先までだけでもついて行けはしないかと思うそうだ。 最もうれしい瞬間は自分なりの演技を見せた後観客から拍手を受ける時だ。 インタビュー、写真撮影の間中に感じたのは「どんな時でも体を本当によく使う人だな~!」
■プロフィール
28才/182cm、67kg/O型/ソウル出身/15才よりバレエ開始、アメリカ、ワシントン キーロフ バレエアカデミー、世宗(セジョン)大学舞踊科卒業、世宗(セジョン)大学公演芸術大学院在学中/2009年ユニバーサル・バレエ入団/韓国バレエ協会ダンスール・ノーブル賞(2011年),東亜舞踊コンクール1位(2009年)授賞
【スポーツQ】